シスタチンC

血清シスタチンによる腎機能の評価

一方、eGFRcreatと異なる腎機能指標として,2005年より保険診療算定が可能となった血清シスタチンCに基づくeGFR(eGFRcys)がある。

シスタチンCは、細胞質や組織の障害を抑え、細菌・ウイルスの増殖を抑制するプロテアーゼインヒビターであり、低分子で腎糸球体を自由に通過できる物質である。

シスタチンCは、筋肉量、食事、運動の影響を受けにくい。

日本腎臓学会のCKD診療ガイドでは,るい痩または筋肉量の少ない患者においてシスタチンCを用いた腎機能評価が適切としている。


シスタチンCの臨床的意義と利用法

http://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/66.html

シスタチンCとは酵素による細胞質や組織の障害を抑え、細菌・ウイルスの増殖を抑制するプロテアーゼインヒビター。

シスタチンCは低分子で腎糸球体を自由に通過できる物質であるため、GFRの低下に伴い血中濃度は上昇する。

 

通常、腎機能検査として使用されている血清クレアチニンや尿素窒素は食事や筋肉量、運動の影響を受けるが、血清シスタチンC値は食事や炎症、年齢、性差、筋肉量などの影響を受けないため、小児・老人・妊産婦などでも問題なく測定できる。

また、クレアチニン値はGFRが30mL/分(腎不全)前後まで低下した頃から上昇するのに対し、シスタチンC値はGFRが70mL/分前後の軽度~中等度の腎機能障害でも上昇し、腎機能障害の早期診断に有用な検査項目。

 

したがって、血清クレアチニンや尿素窒素が正常であっても、尿検査で蛋白あるいは潜血反応に異常が認められた場合には早期腎症と考え、血清シスタチンCを検査する。

血清クレアチニン値が既に高値(2mg/dL以上)であれば、シスタチンCを測定する意義はないが、軽度上昇例で評価が困難な場合、シスタチンC測定で腎機能をみる。 

 

慢性腎臓病(CKD) - 信州医学会

http://s-igaku.umin.jp/DATA/62_04/62_04_02.pdf

したがって,一般臨床では血清クレアチニンを用いた eGFR を使用する。

筋肉量の多い患者,肉体労働や同 じ姿勢を長時間保つ仕事(タクシー運転手など)をしている患者では、血清クレアチニン値が高くなり、見かけ上腎機能低下と見誤ることがある。その場合の腎機能低下の有無の鑑別に血清シスタチンCは有用である。

一般に血清クレアチニンは糸球体濾過量(GFR) が50~60%未満になると正常上限を超えた値になる。 

一方、血清シスタチンCはより感度がよく、GFR80~90%未満で正常上限を超えた値になる。

 

軽度~中等度腎機能低下症例にはシスタチンCによるeGFRcysも推奨される

http://cms.softsync.jp/rinshoyakuri/blog/2015/11/1011-1.html

栄養状態が不良の症例では血清Cr値が低いのだから少なくとも腎機能が極度に悪いということは考えられない。

このように加齢に伴い若干、腎機能が低下しているかもしれないという時に有用なのがシスタチンCだ。

シスタチンCはhouse-keeping geneをコードしているため、炎症などの細胞外の影響を受けにくく、全身の有核細胞から一定の割合で産生されるタンパク質で、広く生体内体液に存在している。

分子量が13,250Daであり、細胞外液中のシスタチンCは全くタンパクと結合せず、すべて糸球体で濾過され、濾過後はほとんどが近位尿細管で再吸収され、アミノ酸に分解されるため、血中には戻らない。

血中濃度はGFRに依存し、血清Cr値に比し、食事や筋肉量、性差、運動、年齢差の影響を受けず、軽度の腎機能の低下に反応して血清シスタチンCの濃度が上昇する。

そのため、CrはGFRが30~40mL/min前後まで低下しないと上昇しないのに対し、GFRで60~70mL/minの早期の腎障害の進行度を判断できるのが特徴となる。

  

しかしシスタチンCの血中濃度は腎機能が低下すると頭打ちになることが分かっており、末期腎不全では腎機能を正確に反映できないため、血清Cr値が2mg/dL以上になればシスタチンCの測定意義は低くなり血清Cr値のみで腎機能を評価するのがよい。

 

シスタチンCの問題点

シスタチンCに関しては、ステロイド、シクロスポリンなどの薬剤の使用や甲状腺機能低下症で、高値に測定されることを念頭に置く必要がある。

シスタチンCの測定キットは当初、メーカーによってそれぞれ異なる社内標準品を基準にしていたため、メーカー間で測定値に差が出るのが問題だった。

しかし2010年以降、認証標準物質DA471/IFCCができたため、メーカー間の測定誤差がなくなってきている。

 

CKD診療ガイド2012ではHorioらおよび小児に関してはUemuraら新たに開発したシスタチンCによる新しい日本人向けGFR推算式が掲載されている。    


 

 

 

以下はドクター用