膵嚢胞

膵嚢胞性疾患

https://www.tokushukai.or.jp/treatment/digestive_surgery/suinouhou.php

・嚢胞(のうほう)とは液体の入った風船のような袋のことであり、膵臓の中もしくはその周囲にできた嚢胞を膵嚢胞と呼びます。

多くの場合、無症状であり、画像診断の進歩により健診などで偶然発見されるケースが増えてきました。

大きさは数㎜程度の小さなものから10cmを超えるものまでさまざまであり、1個だけの場合もあれば複数個認める場合もあります。

 

・膵嚢胞は、腫瘍性嚢胞と非腫瘍性嚢胞に大きく分けられます。

さらに前者は膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、粘液性嚢胞腫瘍(MCN)、漿液性嚢胞腫瘍(SCN)など、後者は膵臓仮性嚢胞、リンパ上皮嚢胞などに分類されます。

 

管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)

膵管上皮から発生する腫瘍で存在する場所によって主膵管型、分枝膵管型、混合型に分類されます。

腫瘍が産生する粘液が膵管内にたまって膵管が膨らんで嚢胞のように見えます。

ほとんどが無症状ですが、膵管内の膵液の流れが悪くなると膵炎を引き起こし、みぞおちから背中へ痛みが起きることがあります。

IPMNは良性から悪性までさまざまな段階があり、長い年月をかけてゆっくりと進行していきます。

発生の原因ははっきりしていませんが、慢性膵炎、肥満、喫煙、アルコール摂取などがリスクとして考えられます。

IPMNで注意する点は、「嚢胞自体ががん化することがある」点と「嚢胞以外の膵内に膵がんが発生することがある」点です。

IPMNのがん化は年1%ほどといわれており、慎重な経過観察が必要で、また、通常型膵がんの発生を早期に発見することが大切です。

後述の画像検査(造影CTやMRCP)、内視鏡検査(EUSやERCP)を組み合わせて経過をみていきます。

検査によって悪性所見が得られた場合、また悪性を強く疑う場合は手術治療が検討されます。

 

粘液性嚢胞腫瘍(MCN)

中年の女性に多く、粘液が貯留した嚢胞を形成し、悪性の可能性が高いため手術治療が勧められます。

 

漿液性嚢胞腫瘍(SCN)

中年の女性に多く、上述のMCNとは異なり良性の可能性が高いですが、大きさが増大するケースなどは手術治療を行う場合があります。

 

仮性膵嚢胞

膵炎や外傷後にできた嚢胞です。

嚢胞の成分は膵液や壊死組織、炎症によって滲みだした液であり、小さい嚢胞であれば自然に消えることもありますが、しっかりした膜を持たないために液が貯留し続けて巨大化することもあります。

大きな仮性膵嚢胞によって腹痛を生じたり、細菌感染を引き起こすことがあります。

また、膵液が強力な消化液であるため周辺の臓器や血管に影響をおよぼし、消化管に穴を開けたり、血管から出血する場合もあります。

大きな仮性膵嚢胞に対しては胃カメラを利用して、胃の中から嚢胞に管を通して嚢胞内の液を胃内に排出する治療が行われます。

細菌感染を起こした仮性膵嚢胞に対して外科的手術を行うこともあります。