慢性炎症性脱髄性多発神経根ニューロパチー(CIDP)

慢性炎症性脱髄性多発神経根ニューロパチー(CIDP)

CIDPは、広範囲に末梢神経が侵される病気です。

手足のしびれ、下肢の脱力、筋力低下、感覚の鈍化が起こり、進行すると歩行が困難になることもあります。

よく似た病気に、感染によって起こる「ギラン・バレー症候群」がありますが、CIDPは先行感染を伴わないのが特徴です。

慢性に進行したり、反復再燃するなど、経過は多彩です。

 

CIDPの診断では、

①2肢以上の末梢神経に運動性および感覚性の障害が見られること、

②深部反射が弱いか消失していること、

③末梢神経伝導検査で伝導速度に遅延が見られること、

④末梢神経の生検で脱髄(神経線維の中央部にある軸索を鞘状に取り囲む被膜である髄鞘が変性し、脱落すること)と髄鞘の再生所見が見られること(血管炎、アミロイドの沈着、白質ジストロフィーの所見がないこと)、

⑤軸索変性を伴っていること(しばしば見られる)、

⑥髄液たんぱくの増加が見られること

が重要

です。

原因はまだわかっていません。

 

経過は、2か月以上にわたって進行し、放置すると約2/3は進行が長期に及び、約1/3は

綴解するようです。

鑑別が必要な病気としては、糖尿病性やがん性、中毒性、異た蛋白血性、遺伝性のニューロパチーなどがあります。

 

治療としては、副腎皮質ホルモン、免疫グロブリン大敗療法(IV Ig)、血漿交換など

が試みられており、日本では、二重膜濾過法による血漿交換の治療には健康保険が適用さ

れています。

血漿交換は6週で中止します。

 

また、副腎皮質ホルモンやIV Ig、血漿交換で効果が得られない患者さんには、免疫抑

制剤を使用することもあります。

再発したり治りにくい患者さんの治療でインターフェロンが効果を上げたとの報告もいくつかあります。

 

CIDPに対する治療法は、まだ確立されていないのが現状ですが、治療を受けた患者さんの約6割が、何らかの症状を持ちながらも職業に従事しているとの報告もあります。

 

参考・引用一部改変

執筆 熊本大学 荒木淑郎 教授

 

きょうの健康 2012.3