痛風は、関節に激しい痛みを起こす病気として知られています。

しかし、痛風で本当に怖いのは痛風発作ではありません。

適切な治療をせずに痛風を放置しておくと、全身にさまざまな合併症が起きてきます。

合併症は、発作が起きないうちにもじわじわと進行し、いずれは生命にかかわるものもあります。

 

なぜ起こる?

痛風は、中の尿酸が多くなると、血液中の「尿酸という物質が過剰に増える病気です。

尿酸が結晶化することで引き起こされるのが、痛風発作です。

尿酸とは、「プリン体」という細胞の核に含まれる「核酸」の一種が肝臓で代謝されてできる物質で、最終的には腎臓でこし取られて尿といっしょに排泄されます。

プリン体は、食事により体外から体内に入ったり、体内で合成されたりします。

プリン体を含む食事の量が多かったり、肝臓でたくさん尿酸がつくられたり、腎臓の働きが悪いために尿酸の排泄が悪かったりすると、血液中の尿酸が増えます。

尿酸が多過ぎると、血液中に溶け切れずに結晶化しやすくなり、体のあちこちにたまってきます。

血液中の尿酸が7mg/Hgを超えると「高尿酸血症」と診断されます。

高尿酸血症の状態をほうっておくと、人にもよりますが、5~10年ほどで痛風になります。痛風予備軍とは、まだ痛風発作が起きていなくても、将来起こす可能性の高い、高尿酸血症の人たちを指します。

 

痛風発作の仕組みと特徴

痛風発作は次のような仕組みで起こります。

 

①関節に結晶がたまる・・・血液中に溶け切れなくなった尿酸がたまると、結晶化し、関節の表面にたまります。

 

②はがれ落ちた結晶を白血球が取り込む・・・何らかのきっかけで関節液内に結晶がはがれ落ちます。

すると、体は「異物がある」と信号を出し、そのサインを受けた白血球が集まってきて、結晶を処理しようとします。

 

③白血球から炎症性の物質が放出される・・・結晶を取り込んだ白血球は、炎症を起こす物質を放出するため、関節に炎症が起こり、腫れや痛みといった症状が現れます。

 

痛風発作は、突然に始まり、最初の1日で痛みは最高潮に達します。

その後、激痛は徐々に鎮まり、1週間~10日後にはけろりと治まってしまいます。

足の親指の付け根が痛みやすいという特徴があります。

 

こんな人は要注意

男性で多食・多飲で太っている人、ストレスが多い人など痛風になりやすい人には、次のような特徴があります。

 

男性・・・患者さんの約98%は男性で、女性はごく少数です。女性ホルモンに尿酸の排泄を促す働きがあるからだと考えられます。閉経後は女性の尿酸値は高くなります。

 

肥満・・・血液中の尿酸値は肥満の程度(BMI)と正比例します。特に内臓型肥満は要

注意です。また、肥満の原因となる「早食い」や「大食い」といった食習慣は、痛風になりやすい行動パターンといえます。脂肪を大量にとると、尿酸の排泄を妨げる物質が多くなります。また、太っていると汗の量が増え、尿酸が結晶化しやすくなります

 

 

お酒が好き・・・アルコールを飲むと、体内で尿酸がつくられやすくなり、さらにアルコールが分解される過程でできる乳酸が、尿酸の排泄を妨げます。特に、ビールには尿酸の原料となるプリン体が多く含まれ、それも尿酸値を上げる原因となります。また、アルコルは核酸の分解を促進します。またエネルギー量が多いため、肥満の原因にもなります。

 

激しい運動をする・・・息が切れるほどの激しい運動(無酸素運動)を行うと、筋肉で尿酸の原料がつくられます。また、大量に汗をかくと体内の水分が少なくなるため、血液が濃縮されて尿酸が結晶化しやすくなります。

 

ストレスが多い・・・直接の関係はまだはっきりわかっていませんが、ストレスがあると、痛風発作が起こりやすくなります。また、ストレスが多いと、アルコルを欽んだり、過食したり、過度の運動をしたりすることが増え、尿酸を上げやすくなります。また、「競争心が強い、目的達成意欲が強い」タイプの人には痛風が起こりやすいものです。

 

30歳代が発症のピーク

かつては、痛風は50歳代、若くても40歳代に多い病気でした。

ところが、患者さんの年齢はしだいに若年化し、現在では、30歳代が発症年齢のピークとなっています。

これは食生活が豊かになり、摂取エネルギーが増えたこと、若い世代に肥満の人が増えたことなどが、大きく関係しているようです。

 

 

ライフスタイル改善のポイント

食事は適量を守り、息のあがらない運動をする

痛風を予防するためのライフスタイルは、次のようなものです。

 

食事は「適正エネルギー量」を守る

痛風予防の食事では、「エネルギーオーバーしない」ことが大切です。バランスのとれた食事を、適量、ゆっくり食べるようにしましょう。ゆっくり食べれば、食べ過ぎずにす

みます。また、プリン体を多く含む食品は控えめを心がけてください。特に肉類にはプリン体を多く含むものもあり、しかもたくさん食べることが多いため、注意が必要です。

 

長く続けられる有酸素運動を

肥満を解消するためにも、運動はぜひ行ってください。息切れせずに行えるウォーキング、ゆっくりの水泳、エアロビクス、水中歩行などがよいでしょう。ただし、ハードな筋力トレーニングや短距離走、テニス、サッカーなど、無酸素運動になりやすいスポーツは、かえって尿酸を増やすことにつながります。

 

ストレスは適切な方法で解消する

「ビールのがぶ飲み、食べ放題や飲み放題」などでストレスを解消するのは、痛風を悪化させることにつながります。また、「サウナ」などで汗を大量にかくと、血液が濃くなるためよくありません。

 

水分を多めにとる

水分を多めにとると、血液が濃くなるのを防ぎ、さらに尿量を増やすため、尿酸が排泄されやすくなります。普通、尿量は1日約1リットルですが、痛風の人は1日に尿量が2リットルくらいになるように水分をとりましょう。そのためには食後のお茶を1杯から2杯にする、寝前に水を1杯飲むなどの工夫が必要です。

 

痛風の治療

痛風の薬には、発作を抑えるための薬と、尿酸値を下げるための薬があります。

それぞれの薬は、のむタイミングや、服用上の注意などが異なるので、医師の指示を守ってきちんと服用することが大切です。

     

薬をのみ始めるポイント

生活習慣の改善だけでは尿酸値が下がらないとき、合併症があるとき

痛風の治療では、まず生活習慣の改善を行います。

しかし、尿酸値が十分に下がらない場合や、発作が起こったときなどには、薬をのんで尿酸値を下げる必要があります。

痛風はほうっておくと尿路結石や腎障害などの合併症を引き起こします。

さらに、高血圧や高脂血症を伴っていると動脈硬化が進み、脳卒中や虚血性心疾患の危険性も高くなります。

薬物療法で尿酸値をコントロールすることは、これらの病気の予防にもつながります。

            

薬はいくつかの種類がある

痛風の薬は、大きく2つに分類できます。

1つは発作時(発作の前兆がある時期と、発作が起こっている時期)に一時的に服用す

る薬、もう1つは、痛風の原因となる高い尿酸憤を下げるために、長くのみ続ける薬です。

薬をのみ始める目安は、痛風の発作を1回でも起こしたことがあるなら、薬は必要です。また、高尿酸血症(血液中の尿酸値が7mg/dl 以上)と診断されたら、生活習慣を改め、定期的に尿酸値をチェックします。

そして、症状がなくても尿酸値が9mg/dlを超えたときには薬をのみます。

尿酸値が8 mg/dl以上で、尿路結石や痛風結節(皮膚の下に尿酸の結晶がたまってこぶができた状態)、腎障害などの合併症がある場合も薬が必要です。

 

痛風発作が起こったときにのむ薬

前触れが起こったときに使う薬と、発作の痛みを抑える薬がある

発作を抑える薬

痛風発作を繰り返している人は、発作が起こる前に、関節がうずくような前触れ症状を感じることがあります。

この段階(前兆期)で「コルヒチン」という薬を服用すると、激しい痛風発作が起こらず、前触れ症状だけですんでしまうことがあります。

コルヒチンには白血球の働きを抑える作用があるため、白血球から炎症を引き起こす物質(炎症性の物質)が放出されません。

そのため、痛みや腫れが起きないのです。

 

ただし、コルヒチンはあくまで発作を抑える薬で、尿酸値を下げる働きはありません。

この薬に頼って尿酸値のコントロールを怠っていると、痛風は決してよくならず、発作が頻発するようになったり、合併症が進行したりしてしまいます。

 

また、コルヒチンは副作用が強く、極期(発作の最初の2~3日)に大量にのみ続けていると、下痢や吐き気などの胃腸障害が起こります。

そのため、服用量は最低限に抑え、発作が起こったときは、次のステップの薬に替えます。

 

痛みを抑える薬

発作が起きた場合には、非ステロイド系抗炎症薬が用いられます。

この薬には、痛み、腫れ、熱などを抑える働きがあります。

 

痛風発作は、極期に特に激しい症状が現れます。

このときは非ステロイド系抗炎症薬を通常の2倍の量服用し、症状を軽減させます

短期間の服用ですが、まれに皮疹やむくみ、胃腸障害などの副作用が起こります。

服用をやめれば改善するので心配はいりません。

 

極期に続く4~5日は回復期で、徐々に症状は治まっていきます。

それに合わせて、非ステロイド系抗炎症薬の量も減らします。

 

非ステロイド系抗炎症薬は、長期間服用すると肝臓や腎臓に障害を起こすことがあるの

で、症状が治まった時点で服用を中止します。

 

尿酸値を下げる薬

尿酸の産生を抑える薬と排出を促進する薬がある

痛風の発作を防ぎ、尿酸値が高いことによって起こる合併症を防ぐためには、尿酸値を

下げる薬を服用する必要があります。

 

患者さんに合った薬を調べる

尿酸値が高くなる原因には大きく分けて2タイプあり、その原因によって、痛風や高尿酸血症も2タイプに分類されます。

1つは肝臓でつくられる尿酸の量が多過ぎる「尿酸産生過剰型」、もうIつは腎臓からの尿酸の排泄が悪い「尿酸排泄低下型」です。

 

尿酸値を下げる薬には2種類あり、患者さんのタイプに応じて使い分けます。

 

尿酸がつくられ過ぎるのを防ぐ薬(アロプリノール)・・・尿酸は、肝臓にある酵素の働きで生成されます。

そこで、この酵素の働きを薬で抑えることで、尿酸の産生量を少なくします。

まれに、肝障害や皮疹などの副作用が起こります。

 

尿酸の排泄を高める薬(ベンズブロマロン・プロベネシド)・・・腎臓に働きかけて尿酸の排泄量を増やし、尿酸値を下げます。

ベンズブロマロンでは非常に頻度は低いのですが、副作用として重大な肝障害が起こることあります。

ただ、肝障害は服用を始めて半年以内に起こり、長い間のむ場合に生じる副作用はほとんどありません。

 

なお、両方のタイプの要素をもつ「混合型」の患者さんでは、合併症などの状態によって、服用する薬が決められます。

両方のタイプの薬を併用する場合もあります。

 

のみ始めの時期は特に注意する

痛風発作は、尿酸値が大きく変動するときに起こりやすいという特徴があります。

急に尿酸値が高くなった場合だけでなく、急に低下したときにも起こることがあるのです。血液中の尿酸の濃度が下がると、結晶がはがれ落ちやすくなって、発作を誘発するためです。

 

そのため、尿酸値を下げる薬の服用を始めてから2~3か月間は、比較的発作が起きやすくなります。

服用を開始して6か月以内に、4割近くの人が発作を起こしたというデータもあります。そこで、尿酸値を見ながら薬の量を調節するのと並行して、同時に発作に備える必要があります。

 

よく楽をのんだのに発作が起こったと薬をのむのをやめてしまう人がいます。

しかし、そうすると再び尿酸値が上がって発作を起こしやすくなります。

尿酸値が安定し、発作が起こりにくくなるまでには6か月ほどかかるので、その間もきちんと服用を続けることが大切です。

 

薬はのみ続けるのが基本

尿酸値を下げる薬は、発作がない時期にもずっとのみ続けることが基本です。

症状がな

いときにこそ、尿酸値を適正な状態にコントロールしておかなければ、発作を繰り返す原因をつくることになります。

また、たとえ発作が起きなくても、尿激が高ければ、腎障害などの合併症は確実に進行していきます。

 

治療のポイント

薬の調節や合併症のチェックなど、定期的な診察を欠かさずに

 

痛風の治療では、定期的に合併症のチェックを受け、必要に応じて合併症の治療も行う

必要があります。

また、水分を多くとって尿を増やしたり、場合によっては尿をアルカリ性に傾ける薬を服用するなどの「尿路管理」も欠かせません。

 

痛風や高尿酸血症は、高血圧、動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病と関係の深い病気で

す。

痛風の治療を継続していくことは、ほかの生活習慣病を予防することにもなります。

 

 

参考および引用 「きょうの健康 2002.1」