びまん性汎細気管支炎は、呼吸細気管支と呼ばれる細い気管支を中心に慢性炎症がおこり、せきやたんが出たり、息苦しくなる病気です。
1969年に、日本から新しい病気として初めて提唱され、今では、世界中で認められている病気です。
びまん性汎細気管支
http://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=14
・日本を中心として東アジアで多くみられる病気ですが、欧米ではほとんどみられません。このため、病気には人種特異性や遺伝的要因の関与が示唆されていますが、未だに詳細な原因は不明で、環境因子と遺伝因子の両方が関係して発症すると考えられています。
近年わが国において患者数は減少してきています。
発症に男女差はほとんどなく、発症年齢は40~50歳代が多いですが、若年者や高齢者にもみられます。
・ほとんどの患者さんで慢性副鼻腔炎(蓄膿症)を合併するので、鼻づまり、膿性鼻汁、嗅覚低下などの症状があります。
気道が狭くなり、さらに気道に細菌が定着し分泌物の産生が増え、持続するせきや膿性のたん、息切れがみられます。
特にたんの量が多いのが特徴です。
・胸部エックス線画像やCT検査で、両側の肺全体に広がる小さな粒状の影や気管支壁の肥厚、気管支の拡張、肺の過膨張所見がみられます。
呼吸機能検査では閉塞性換気障害、血液検査では白血球数の増加、赤沈、CRPの上昇、寒冷凝集素価の高値などがみられます。
たんからは、肺炎球菌、インフルエンザ菌が検出され、進行例では緑膿菌が検出されます。
・マクロライド少量長期療法が基本です。
発症早期ほど効果が良いとされています。
また、増悪の予防には、栄養状態の改善やインフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンの接種も大切です。
細菌感染により増悪した時は、原因となる細菌に対する抗菌薬の投与が必要です。
以前は、予後の悪い病気でしたが、1980年代以降、マクロライド少量長期療法により、病気の経過は著しく改善しています。
びまん性汎細気管支炎(DPB)の症状や原因・診断・治療方法と関連Q&A
https://health.goo.ne.jp/medical/10750200
びまん性汎細気管支炎(DPB)に対するマクロライド少量長期投与
http://square.umin.ac.jp/jin/text/dpb.html
・炎症が気管支末端の呼吸細気管支全層に広がり、呼吸細気管支のむくみ、分泌物の増加により気道が狭められ、呼吸困難、喘鳴、せき、たんなど気管支喘息と同様な症状がでる病気で、患者の80%が慢性副鼻腔炎を合併しているのが特徴です。
マクロライドの投与により気道液中の細菌が消失しなくても治癒すること、エリスロマイシンに全く感受性を持たない緑膿菌症例でも有効であることなどから、マクロライドの DPB に対する作用として抗菌作用以外のメカニズムが考えられています。
このような作用をもつのはマクロライドの中でも14員環構造をもつ薬剤に限られています
・このような作用をもつのはマクロライドの中でも14員環構造をもつ薬剤に限られています
びまん性汎細気管支炎とは
https://medicalnote.jp/contents/160309-022-TA
・寒冷凝集反応(低温で血球と結合して凝集を起こし,高温ではずれる「寒冷凝集素」と呼ばれる抗体)が高値を示す。
・しばしばHLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)がB54を示す。
主な気管支炎5種類を解説-症状や検査、治療はどう行う?
https://medicalnote.jp/contents/170926-002-AJ
・びまん性汎細気管支炎では、胸部CTやレントゲンなどで細気管支周辺が全体的に広がる粒状影が確認でき、これによって診断されます。
副鼻腔の所見を呈している場合は、副鼻腔気管支症候群といい、肺での合併症としてびまん性汎細気管支炎を呈していると考えた方がいいのかもしれません。
ほかに、気管支拡張症を呈することもあります。
・初期であれば上記の治療が有効ですが、症状が進行している場合にはマクロライドの服用は効果がみられないことがほとんどです。
ですから、比較的年齢の若い患者さんで、肺移植の条件を満たしている場合には、肺移植が適応となることもあります。