ティーツェ病

ティーツェ病

【英】Tietze's disease 《同義語》栄養障害性肋軟骨萎縮症

肋軟骨部の膨隆と疼痛を主訴とする疾患で,1921年ティーツェ A. Tietzeによって記載された.ティーツェは肋軟骨の栄養障害によるものと推測したが現在もなお原因不明である。

比較的若い成人女性に多く,第2, 3肋軟骨が好発部位である。

急性あるいは潜行性に起こり,胸郭の運動によって疼痛を生じ,炎症所見を欠くが膨隆した肋軟骨に圧痛がある。

数週で治癒することが多いが時には数年以上も続くことがある。

組織学的検索では正常軟骨で異常を認めない場合が多いが,時に石灰沈着,変性細胞,壊死がみられる(Alexander Tietzeはドイツの外科医,1864-1927)。

 

Tietze's Syndrome ティーツェ症候群(胸骨傍軟骨膜炎)

Tietze症候群は、疼痛を伴う1つ以上の肋骨軟骨関節の腫脹によるものであり、40歳未満で多く、男女とも同等。多くの患者では1つの関節のみで、第2あるいは第3肋骨肋軟骨関節に生じやすい。前胸部痛の発症は突然もあるし緩徐なものもある。

 

痛みは腕、肩に放散する場合があり、くしゃみ、咳、深吸気、胸部のねじる動きで増悪。

肋軟骨炎はしばしばTietze症候群と同義語的に使われることがあるが、厳格には、肋軟骨炎は腫脹を伴わない肋軟骨のの関節症の痛みであり、肋軟骨炎は40歳以上でもみられ、第3、4、5肋軟骨関節が冒される傾向。女性にしばしば多い。

 

両症候群とも心臓・上腹部疾患原因の痛みと類似する。リウマチ、強直性脊椎炎、Reiter症候群が肋軟骨関節まで冒されることがあるが、他の臨床状態で鑑別が容易である。

 

 

・米国で原因不明の胸痛を訴える患者を診断・治療するための医療費は年間2万ドルと推定(Achem SR, DeVault KR; Curr Gastroenterol Rep 2: 201-209. 2000)

・原因不明の胸痛患者が10年以内に死亡する割合は1%以下と、予後は比較的良好(Chambers J, Bass C; Prog Cardiovasc Dis 33: 161-84; 1990)

 

 

 

よく似た胸痛を来す疾患

肋軟骨炎:胸骨と肋骨の間に存在する肋軟骨の炎症。第2~5肋骨の片側に起こる。

胸痛全体の3%程度を占めるといわれ、特に小児や思春期の若者の胸痛の20%が、肋軟骨炎が原因という報告もある。

女性の方が2倍多い。

外傷やウイルス感染などが先行することがあるが、多くの場合は原因不明。

一般的には深呼吸などで痛みが強くなるが、数秒単位の安静時痛を認めることもある。

腹部、背部などに痛みが放散することも。治療は鎮痛薬。

 

Tietze症候群:1921年にAlexsander Tietzeによって報告された第2~5肋間軟骨移行部に好発する非化膿性の有痛性疾患。

成人に多く原因は不明。自発痛・圧痛があり腫脹を伴うが、熱感や発赤は認めない。

多くは自然治癒する。

 

肋間神経痛:まさにその名の通り、肋間を走る神経の痛み。

中年以降に多くみられる疾患で胸椎疾患や紋扼性障害に伴って起こることがあるが、大部分は原因不明。

もっとも、これは疾患名ではなく症状名。

あと、神経根への腫瘍浸潤の可能性もありご注意を。

 

SAPHO症候群:Synovitis(滑膜炎)、Acne(座瘡)、Pustulosis(膿疱症)、Hyperostosis(骨化症)、Osteitis(骨炎)の頭文字。主に前胸部で無菌性の骨炎を認め、鎖骨と第一肋骨部に骨硬化と腫大が見られる。

皮疹の性状として掌蹠膿疱症が多い(欧米では座瘡が多い)。

漠然とした胸痛で緊急性がなさそうなら皮疹をチェックする。

NSAIDs、ステロイド、MTXなどが使用されることが多い。

 

帯状疱疹:ご存知皮疹を伴い神経の走行に一致した痛みを認める疾患。

皮疹が出現する3~7日程度前から痛みが出現することがあり注意が必要。

 

モンドール病:乳房と前胸壁の浅静脈の血栓性静脈炎を認める珍しい症例。

中年女性にみられ、皮膚の索状物として触れることができる。

治療を必要としないことが多いが、血栓性静脈炎の原因として乳癌や肺癌の場合がある。

 

 

 

関連サイト

肋軟骨炎(ティーツェ症候群)

http://ja.healthline.com/health/costochondritis#Overview1

 

Tietze 症候群

http://rockymuku.sakura.ne.jp/seikeigeka/Tietze.pdf

 

肋軟骨炎を早期診断すれば急性胸痛による入院をへらせるか?

http://intmed.exblog.jp/1201695/

 

胸の真ん中が痛むティーツェ症候群とは?

http://www.asahi.com/apital/articles/SDI201707129539.html

・肋骨と胸骨の間の「肋軟骨」に無菌性の炎症が起き、痛んだり腫れたりします。

12本ある肋骨の上から2、3番目の肋軟骨から胸骨にかけて症状が出ることが多く、肩や腕に痛みを感じる人もいます。

 

・比較的まれな病気で、原因はわかっていません。

患者は20~30代に多く、男女差はありません。

 

・同じような病気に肋軟骨炎がありますが、これは40代以上の女性に多く、運動などで激しい動きをする人や、脊椎関節炎や関節リウマチなどに伴って起きることがあります。