自己免疫性膵炎

(メディカルノート)

 

自己免疫性膵炎

・自己免疫性膵炎は一般的な慢性膵炎とは異なり、ステロイド薬がよく効く特殊な膵炎。

その原因はまだ解明されていないが、IgG4関連疾患と呼ばれる慢性疾患の代表的な病態のひとつであることがわかってきた。

 

自己免疫性膵炎とは?

自己免疫性膵炎は1995年に提唱された比較的新しい疾患概念。

膵臓がんとの鑑別が重要であり、ステロイド薬がよく効く特殊な膵炎として注目されてきた。2000年代初頭に免疫グロブリンのひとつであるIgG4との関連が報告されたことによって解明が進み、涙腺・唾液腺に現れるミクリッツ病とともにIgG4関連疾患の代表的な病態であるという新しい概念が確立されている。

 

「自己免疫性膵炎診療ガイドライン2013」(厚生労働省難治性膵疾患調査研究班・日本膵臓学会)

・しばしば閉塞性黄疸で発症し、時に膵腫瘤を形成する特有の膵炎である。。

リンパ球と形質細胞の高度な浸潤と線維化を組織学的特徴とし、ステロイドに劇的に反応することを治療上の特徴とする。

 1型自己免疫性膵炎と 2型自己免疫性膵炎の 2亜型に分類される。

わが国では主として 1型であり、単なる「自己免疫性膵炎」とは 1型を意味する。

 ・1 型は著明なリンパ球・形質細胞浸潤,IgG4 陽性形質細胞の浸潤,花筵状線維化(storiform fibrosis)、閉塞性静脈炎を特徴とするlymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis(LPSP)と同義である。

・ 欧米に多い 2 型は好中球上皮病変(granulocytic epithelial lesion;GEL)を特徴とし、idiopathicduct―centric chronic pancreatitis(IDCP)と同義であり、1 型とは別の病態である。

・IgG4関連疾患を専門に扱っている私たちから見ると、ここでいう1型の自己免疫性膵炎がIgG4関連疾患の膵病変であるということになります。いわゆる2型の自己免疫性膵炎はIgG4が関係していない、好中球が主に炎症の主体になっている膵炎のため、区別して考える。

 

自己免疫性膵炎の原因とは? どのような人がなりやすいのか

・自己免疫性膵炎の原因はまだわかっていない。

過去に報告されている推定患者数は、たとえば2007年で約3,000人とされているが、これは大学病院や大病院だけを調査の対象にしているため、実際は少なくともその数倍はあるのではないかとみられる。

・高齢者で急に耐糖能障害が悪化するケースがみられる。腹部エコーによる膵腫大で自己免疫性膵炎が見つかる場合がある。

 

自己免疫性膵炎の症状とは?自覚症状の現れ方

・自己免疫性膵炎は自覚症状が出にくく、ゆっくりと潜在的に進行することが多いが、症状が現れるときに多くみられるのは閉塞性黄疸。

・膵臓が腫れることによって中を通っている胆管が圧排され、脂肪の分解を助ける消化液である胆汁が流れなくなるため、黄疸になりる。

・そのほかの自覚症状としては、上腹部の違和感や背部痛など、いわゆる慢性膵炎に類似した症状がしばしばみられる。

 

自己免疫性膵炎の検査

・自己免疫性膵炎が見つかるきっかけとして多いのは膵腫大による閉塞性黄疸。腫瘤形成性膵炎や硬化性膵炎の概念が確立され、その後に自己免疫性膵炎の概念が打ち出されてきた。

・閉塞性黄疸では腫瘍マーカーの値が上昇することがあり、それだけでは膵がんとの鑑別をすることはできない。また、がんであればPETなどの検査も行いますが、その場合も自己免疫性膵炎でもがんと同じような集積が見られるので鑑別の決め手にはならない。

・自己免疫性膵炎の診断にはエコー(超音波検査)が必要であり、特に超音波内視鏡(EUS)などできちんと精査した上で、さらにはEUS-FNA(超音波内視鏡下穿刺吸引法)で細胞を採取して、がんではないということを鑑別する。

 

自己免疫性膵炎の診断

典型的な所見としては、びまん性に膵臓が腫れていて、なおかつ造影CTでカプセル状に皮膜が被っているような構造があれば、画像からだけでもほぼ自己免疫性膵炎であると判断することができる。ただし、炎症部位が膵尾部と体部や頭部に分布していたりするケースもみられるため、丁寧な診断が必要がある。

 

自己免疫性膵炎の治療-ステロイド薬を用いた治療がメイン

1型の自己免疫性膵炎、つまりIgG4関連疾患としての自己免疫性膵炎にはステロイド薬が奏功する。半減期の問題を考えるとプレドニゾロンが一番使いやすいテロイド薬といことになる。毎日服用していても翌日に残らないというところが大きな利点であり、「自己免疫性膵炎診療ガイドライン」においても、1型が強く示唆される場合はプレドニゾロンが標準的な治療となっている。

 

自己免疫性膵炎と診断されたときの食事や生活習慣指導

・自己免疫性膵炎に関しては、とりわけ気をつけなくてはいけないことや、日常生活の制限というものはない。ただし、膵臓に炎症があることは事実なので、普通の慢性膵炎と同じようになるべく脂肪の少ない、膵臓に負担のかからない食事を心がける。そしてステロイドの治療中には、血糖が上がりやすくなるので、その点に気をつける必要がある。

 

自己免疫性膵炎の予後、再燃の可能性は高いのか?

・自己免疫性膵炎の治療は、年単位での長期的な取り組みが必要となる。

 

合併がみられやすい膵外病変とは?

・IgG4関連疾患は全身性の慢性疾患のため、最初に膵病変の診断がついても、それだけで終息するとは限らない。内科医としては全身を診るというスタンスが必要である。IgG4関連疾患としての自己免疫性膵炎からの流れでは、同じ胆管膵系の硬化性胆管炎の頻度が高くなる。このほかとしては、涙腺・唾液腺以外では腎臓や肺にも病変をきたすことがある。

 

・自己免疫性膵炎は長期的に維持療法が必要になるという面があるが、少ない量のステロイド薬を服用し続けることによって、普段通りまったく制限のない生活を送ることは可能だ。ただし、長期的な予後がまだわからない疾患であるため、症状がよくなってもしばらくは継続的に様子をみていく必要がある。