膜性腎症

膜性腎症

ネフローゼ症候群の一種。

腎臓内の糸球体は、血液をろ過する働きする。

膜性腎症は糸球体の毛細血管壁を構成する「基底膜」と呼ばれるフィルター構造の場所に、免疫複合体(免疫反応に関わる抗原・抗体・補体が結合したもの)が沈着して基底膜が肥厚することで血液のろ過機能が低下し、タンパク尿や浮腫といった症状が現れる病気。

約70%は明らかな原因疾患がない一次性(原発性)で、男女比は「男:女=6:4」と比較的男性に多くみられる。

年齢構成は60歳代が最多で、90%以上が40歳以降に発症する。

成人のネフローゼ症候群のうち約30%以上を占め、特に40歳以上で過半数を占める(小児は約5%)。

膜性腎症の残り30%は、なんらかの原因疾患によって引き起こされる二次性(続発性)。

悪性腫瘍 (胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、リンパ腫) や、感染症 (B型肝炎、梅毒)、膠原病 (全身性エリテマトーデス、関節リウマチ)、薬剤  (金製剤などの抗リウマチ薬) が原因となることがある。

B型慢性肝炎やB型肝炎ウイルスキャリアの方が発症しやすく、この場合はHBe抗原をもとにした免疫複合体が関与しているとの報告もあり、最近では自己免疫疾患と考えられるようになっている。

 

予後不良(治療後の経過が良くないこと)のリスク因子

・男性

・60歳以上の高齢発症

・発症時の腎機能低下

・糸球体硬化病変

・尿細管間質病変

 

発症の時点では目立った変化はなく、時間をかけて徐々に悪化する。

特徴的な症状として、慢性的なタンパク尿と浮腫がみられる。

膜性腎症の3分の2はゆっくりと進行し、3分の1は自然寛解(治療をしなくても自然に症状がなくなること)する。

 

検査・診断

腎生検によって採取した病理組織から診断する。

光学顕微鏡を用いた検査では、免疫複合体が糸球体基底膜に沈着している様子が基底膜の肥厚として確認される。

典型例としては、PAM染色(糸球体基底膜の観察を行なうための染色法)で見ると、基底膜のスパイク形成(釘を打ったような形)が確認される。

蛍光抗体法(蛍光色素が付いた抗体を用いて抗原の所在を調べる染色方法)では、顆粒状沈着物として免疫グロブリンG (IgG)や補体タンパク質C3が認められる。

電子顕微鏡を用いた検査では、高電子密度の沈着物として免疫複合体が基底膜の上皮細胞側にみられる。

また、尿検査で尿タンパクを調べると、分子量が小さい血中タンパクであるアルブミンの比率が低く、分子量が大きい免疫グロブリンG (IgG)の比率が高くなる (この状態を「選択性が低い」と表現する) 。

なお、高齢者に膜性腎症がみられたときは悪性腫瘍の検査も必要となru。

 

治療

ステロイド薬単独もしくはステロイド薬と免疫抑制剤を組み合わせて治療する。

ネフローゼ症候群の症状が長引いている患者さんには、寛解(症状が落ち着いて安定した状態)を目標とした免疫抑制療法が推奨されている。

 

参考