<マイコプラズマ感染症とは>
Mycoplasma pneumoniae(マイコプラズマニューモニエ)というウイルスと細菌のあいだに位置する微生物が原因となって、さまざまな臨床症状を呈します。
Mycoplasma pneumoniae は細胞壁をもたないので通常のペニシリン系やセフェム系抗生物質は無効です。
飛沫感染しますが感染力はそれほど強くなく,家族や同一学級などの密接な環境下で広がります。
潜伏期間は1~3週間程度と考えられています。
患者の報告数は近年増加傾向にあり、全体の約80%が0~14歳の小児です。
感染後には血中抗体が上昇しますが、この抗体は2年程度で低下してしまうので再感染することがあります。
少し前までは4年に1度流行するので、かつては「オリンピック肺炎」と俗称されていましたが、現在はこの流行周期ははっきりしなくなって来ています。
<症状>
・初期の症状は発熱やだるさ、頭痛など、かぜに似ています。
発熱、咳、頭痛、鼻汁、倦怠感などが主症状です。
何よりも大きな特徴は長引くせきです。
たんが少なく乾いたせきで、熱が下がってからも3~4週間続くこともあります。
病初期には乾いた咳ですが、次第に湿った咳になっていきます。
ときに肺炎を起こし、まれに重症化することもあるので注意が必要です。
・肺炎を起こすことがあり、これは「マイコプラズマ肺炎」という名前で有名です。
・気管支喘息の発作を誘発して、胸がゼイゼイすることがあります。
<診断>
・血液検査 「採血をして調べる抗体検査」
マイコプラズマ抗体が上昇し寒冷凝集反応が増加します。
・咽頭ぬぐい液検査 「喉の奥から菌をこすりとって調べる抗原検査」
この抗原検査は、採血をしなくてもすむので子どもへの負担が少なく、また迅速に検査結果がわかるので簡便な検査です。
(当院では両方の検査が出来ます)
・胸部エックス線
マイコプラズマ肺炎を起こした場合には、スリガラス状の陰影を生じます。
肺の片側のことが多く、40%は右下肺野に陰影が見つかるといわれます。
もちろん、陰影が出て初めて「肺炎」という病名がつきます。
<治療>
・早期診断・早期治療が大切です。
つまり、何よりも早期診断・早期治療が重症化を防ぐポイントといえます。
有効な抗菌薬で早期に治療をしなかった場合は、重症肺炎などになるおそれもあります。
・マイコプラズマ感染症の場合は、様々な感染症に使用されるβ-ラクタム系の抗菌薬は効きません。
・マクロライド系(クラリス、エリスロシン、ジスロマック、リカマイシン
など)、ニューキノロン系(クラビット、ジェニナックなど)の抗生物質が有効です。
テトラサイクリン系は有効ですが、小児では副作用の点から年長児の重症例以外には通常用いません.
・ゼイゼイが起きた場合には喘息の治療が必要になります。
<合併症>
3~4%に中枢神経症状(髄膜炎、脳炎)、8~15%に消化器症状(下痢、嘔吐、食欲不振,、肝機能異常)、3~30%に発疹などを生じることがあり、臨床像は多彩です.
マイコプラズマとは―どんな病気を引き起こす細菌なのか
https://medicalnote.jp/contents/151029-000030-BERTJS
マイコプラズマ肺炎の症状、特徴について
https://medicalnote.jp/contents/151029-000031-FNNIGL
マイコプラズマ肺炎の検査と診断について
https://medicalnote.jp/contents/151029-000033-DDCQJA
・マイコプラズマ肺炎の典型的な症状のひとつは、乾いたしつこい咳です。
・マイコプラズマ肺炎を疑った際にまず行う検査は、胸部レントゲン撮影です。
乾いたしつこい咳などの症状があるうえに、胸部レントゲンで異常が見つかった場
合には、必要に応じて健康保険が適用されるマイコプラズマの検査(①迅速診断
法 ②核酸増幅法 ③血清抗体価測定)を行って、マイコプラズマ肺炎を特定して
いきます。
(私的コメント;胸部レントゲンで異常が見つかる典型的なマイコプラズマ肺炎はそ
れほど多くありません。胸部レントゲンが正常であっても、無熱で乾いた咳が長く
続きマイコプラズマの諸検査が陽性の場合があります。こういった場合、マイコプ
ラズマ「肺炎」と呼ぶには抵抗があるので、私は患者さんには「マイコプラズマ気
管支炎」または「マイコプラズマ感染症」と説明しています)
・迅速診断法は、喉の奥をこすって菌がいるかどうかを調べる検査です。喉の奥をこ
すった後、20分ほどで結果が出ます。すぐに結果が出る非常に簡便な検査です。
・マイコプラズマ肺炎の場合は白血球が正常あるいは低下することが特徴的です。
・症状や胸部レントゲン検査の結果からマイコプラズマ肺炎が疑われる場合は、診断
が確定する前に治療を開始することがほとんどです。
マイコプラズマ感染症に対して使用される抗菌薬は、マクロライド系のエリスロマ
イシンやクラリスロマイシンなどが主体で、10~14日間内服します。
・マイコプラズマは、抗菌薬ですぐには死滅しません。
治療しても数週間にわたって体内に生息し、他の人に感染することもあるので、咳
エチケットなど生活には留意する必要があります。
マイコプラズマ肺炎の治療について
https://medicalnote.jp/contents/151029-000035-NWGOVS
マイコプラズマ肺炎の出席停止期間は?―予後・予防接種・流行についての知識
マイコプラズマ肺炎に関するQ&A(厚労省)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou30/index.html