心臓粘液腫
https://med.toaeiyo.co.jp/contents/cardio-terms/disease/3-85.html
心臓粘液腫は原発性良性心腫瘍の30~50%近くを占めると報告されており、最も頻度が高い。その75%は左房に、15~20%は右房に発生し、心室内の発生はまれである。男女比は1:3で、好発年齢は30~60歳台である。
多くは、卵円孔近傍の心房中隔より発生する。発生部位、大きさ、可動性の有無により、以下に示すさまざまな症状を呈する。
①心腔閉塞症状:
心房内の腫瘍では弁口を狭窄するため、臨床的に僧帽弁狭窄症あるいは三尖弁狭窄症と似た病態を呈し、体位変換によって症状や所見が変化する。
弁口を完全に閉塞した場合には失神発作や突然死に至る。
心室内の腫瘍では、流出路狭窄により、大動脈弁狭窄症あるいは肺動脈弁狭窄症に類似する。
②塞栓症:
脳動脈が塞栓の好発部位である。その他、腎臓、腹部大動脈、四肢動脈などに全身性の塞栓症を起こす。右心系の粘液腫では、肺塞栓症が発生する。
③全身症状:
全身倦怠感、食欲不振、発熱、体重減少、貧血などを認める。診断には心エコー図が有用である。腫瘍の大きさ、付着状態、可動性について情報を得ることができ、経食道心エコー図によりさらに詳細な情報が得られる。CTでは心筋浸潤や心膜への進展の程度が評価できる。また、MRIでは腫瘍表面や内部組織の性状が描出される。治療は手術切除が基本であり、通常完治するが、1~5%の症例で再発を認める。