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意外に怖いRSウイルス、乳児に加え高齢者も
・子どもの病気と捉えられがちな「RSウイルス感染症」だが、呼吸器関連の基礎疾患がある高齢者でも、病状悪化の引き金になることが分かってきた。高齢者で重症化するリスクは、インフルエンザと同程度というデータもある。
・RSウイルスは、2歳になるまでの間にほぼ100%の小児が感染するといわれており、特に初回感染では重症化しやすい。このため小児科医は、乳児に発熱や鼻汁などの上気道症状が出現しRSウイルス感染症を疑った場合には、注意深く経過を観察するのが定石となっている。ハイリスクの乳幼児にのみ適応があり、RSウイルス感染による重篤な下気道疾患の発症を抑制するパリビズマブ(商品名シナジス)も、2013年から臨床使用できるようになっている。
・息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心不全などの基礎疾患がある高齢者では、RSウイルス感染によって、しばしば症状の増悪が認められる。
・インフルエンザとは違い、RSウイルス感染症には高齢者に適応のあるワクチンや薬も存在しない。
・RSウイルス抗原の迅速検査キットの適応は、これまで段階的に拡大されてはいるものの、現時点でも、1歳以上の外来患者は保険適用で検査をすることはできない。その結果、我が国の成人におけるRSウイルス感染の実態は、よく分かっていないのが現状だ。ワクチンの開発も世界的に行われてはいるものの、今のところ実用化の目途は立っていない。
・RSウイルスは主に飛沫感染と接触感染で感染を拡大する。リスクの高い乳幼児の家族や、COPD・喘息の既往のある高齢者と接する時間の長い介助者が、マスクの着用や手指衛生といった基本的な対策を徹底するしか予防の手立てはない。