「虹彩炎」は「虹彩毛様体炎」とも呼ばれ、前眼部に起きる「ぶどう膜炎」の1タイプです。
両眼性、片眼性のいずれもがあります。
虹彩炎を生じる疾患には、いろいろな臓器に、肉芽腫と呼ばれる病変を生じる「サルコイドーシス」、ぶどう膜炎の一種である「原田病」、口腔粘膜や目、外陰部、皮膚に炎症を起こす「ベーチェット病」など、全身病と関連のあるものもあります。
しかし、症状が目だけに限られる虹彩炎も半数以上あり、これらの多くは原因不明です。
そのため、虹彩炎を起こしている患者さんには、胸部エックス線や血液炎症反応の検査
を行いますが、全身検査で異常所見が出ないこともあります。
症状は、光がまぶしい(羞明)、かすんで見える(視力低下)、鈍痛感などで、これら
の症状は徐々に起きます。
眼科検査(眼球の病変を調べる細隙灯顕微鏡検査)では、前房水(角膜と虹彩、水晶体
で囲まれるスペースを満たす生理的液体)への血液蛋白、細胞の漏出による濁りが見られます。
この濁りは炎症の強さに比例し、線維素(血液の凝固にかかわる蛋白)などが現れることもあります。
現在は、炎症の程度を数値で検査できる装置もあります。
炎症が強かったり、長引くと、瞳孔(虹彩の中央にある黒い部分)の縁が水晶体に癒着してしまうことがあります。
治療は、炎症抑制を目的に副腎皮質ステロイド薬(ステロイド薬)の点眼、結膜下注射、
内服、または非ステロイド性消炎薬の点眼、内服および炎症の場である毛様体の安静目的
でアトロピン、ミドリンPなどの散瞳薬を症状に応じて使用します。
虹彩炎そのものに対する手術療法はありません。
虹彩はカメラの絞りの役割をしているので、水晶体への癒着状態により、見え方に違
和感が出ることがありますが、急性の眼圧上昇などがなければ手術の必要はなく、経過を
見ることでほかの問題は起きません。
ステロイド薬は感染を助長したり、「緑内障」を起こすことがあるので、自分勝手に使
用するのは危険です。
また、虹彩炎は再発が多いことにも留意しておくことが大事です。
参考・引用一部改変
執筆 日本大学医学部教授・澤 充 教授
(「きょうの健康」2002.3)