動脈硬化の検査

危険因子の有無を調べる

血中脂質と血糖値が高血圧かどうか確認

突然、心筋梗塞を発症して、動脈硬化が進行していたことがわかったというケースは少なくありません。

現在は、医療機器の進歩によって動脈硬化を診断できるようになってきました。

検査には、さまざまな方法があります。

 

まず、血液検査では、血管を傷つける危険因子をもっているかどうかを確認できます。

危険因子となるのは、血中脂質のLDLコレステロール値と血糖値です。

 

LDLコレステロール値が高い場合には脂質異常症が、血糖値が高い場合には糖尿病の可能性があります。

脂質異常症と糖尿病は、動脈硬化を進めます。

これらに該当する場合は、動脈硬化が進行していると考えられます。

 

もうIつの危険因子は、高血圧です。

血圧測定で高血圧と診断されてそれが続いている場合は、動脈硬化の危険性が高まります。

動脈硬化がどのくらい進んでいるかを調べるためには、血管の詰まりや血管の硬さを調べる検査を行います。

 

血管の詰まりを調べる

首の頚動脈に超音波を当てる 

血管の詰まりを調べるには、首の頚動脈に超音波を当てて血管を見る超音波検査を行います。

 

動脈硬化には、粥腫によって血管の内膜が厚くなることで血管内腔が狭くなるアテローム動脈硬化と、血管の内膜と中膜が主に石灰化によって硬くなる2つのタイプがあります。

 

血管の超音波検査ではアテローム動脈硬化を発見することができます。

 

首にある頚動脈は、いちばん太いところで内側の直径が8mmほどありますが、内膜の盛り上がり(プラーク)ができると、それより狭くなります。

頚動脈のこういった変化は、全身の動脈の状態を示す指標になっており、血管超音波検査の結果から、全身の動脈硬化がどのくらい進んでいるかを予測することができます。

 

また、脳梗塞を起こす危険度もわかります。

頚動脈の動脈硬化が進行して血管が狭くなっている狭窄がある場合、血流が悪くなるだけでなく、狭窄部で生じた血栓(血の塊)が剥がれて脳の動脈に詰まり、脳梗塞を引き起こすことがあるのです。

 

内膜の盛り上がった部分を剥離する手術や、血管の狭窄部にステントという金属製の筒を入れて血管の内腔を広げることで、血流を確保します。

 

血管の硬さを調べる

血液が心臓から足首に伝わる速さなどを調べる

血管の硬さを調べる検査には、心臓の拍動(脈波)の衝撃が動脈を通じて全身に伝わる速度を調べるPWV検査があります。

血管が柔らかい場合、血流の衝撃を血管が吸収するため、心臓の拍動はゆっくり伝わります。

その速さは秒速10mほどです。

 

一方、血管が硬くなっていると、血管は弾力性がなくなり衝撃を吸収しないため心臓の拍動は腕まで、あるいは足首まで速く伝わります。

PWVの測定値が速ければ速いほど、動脈硬化が進んでいることを示しています。

健常者の値がわかっており、それと比較することによって血管年齢を推定することも可能です。

 

PWVの検査では、あおむけに寝て、両方の上腕と足首にカフを巻きます。

心臓から腕と、心臓から足までの距離と脈波の到達時間の差を計測して数値が得られます。

所要時間は、5分程度です。

PWV検査と同時に、ABI検査も行います。

ABIとは、上腕と足首の血圧比です。

例えば、一定量の水を流す場合、太い管よりも細い管のほうが管にかかる圧力は高くなります。

血管は足先に行くほど細くなるため、血管が詰まっていなほうが血圧は高くなにます.

 

一方、動脈硬化が進行して血管が詰まり、血流が悪くなると、腕よりも足首のほうが血圧は低くなります。

その場合には、閉塞性動脈硬化症が疑われます。

閉塞性動脈硬化症では、脚の血流が悪くなって足先に血液が行かなくなるため、歩くと足が痛くなり、さらに進行すると足先が壊死してしまうこともあります。

これらの検査は、血液検査などで動脈硬化が疑われる場合、診察時に健康保険の範囲で循環器内科や血管外科などでも受けることができます

 

■眼底検査でも調べられる

その他の検査法としては、眼底検査があります。

目の網膜を映して、網膜の動脈を直接見ることで、動脈に異変がないかどうかを調べます。血管の中央が輝いて見えたり(血柱反射)、静脈が動脈に圧迫されて途切れている場合には、動脈硬化が進行している可能性があります。

 

参考

東京医大・山科 章 教授 「きょうの健康」 2016.5

 

(当院では「頚動脈エコー」、「PWV検査・ABI検査」、「眼底検査」のいずれも行っています)