前立腺がんは増えている
前立腺がんは中高年の男性に多く見られるがんです。
アメリカでは10年以上前から、男性においてもっとも罹患率の高いがんとなっています。
日本でも最近患者数が急激に増えており、臓器別がん死亡数の増加比をみると、前立腺がん
では、1995年の死亡数を1とすると、2015年の予測値は約3倍と予想されており、増加率はトップになっています。
参考: 前立腺がんの死亡数 1995年5,399人 → 2007年9,786人( 人口動態統計より )
幸いに、前立腺がんは血液検査による早期発見が可能です。
50歳以上の男性や、血縁者に前立腺がんの人がいる男性は、定期的に検診を受けることが大切です。
増加率トップ! 2015年には1995年の3倍に
前立腺のはたらきと前立腺がん
前立腺とは、男性の膀胱の下にあり、尿道を取り囲むように存在するクルミ大の臓器
で、精液の一部である前立腺液を分泌し、精子の運動機能を助ける働きをしています。
男性ホルモンによって大きくなるため、中高年になると尿道が圧迫され、おしっこの勢
いが悪くなる前立腺肥大症という良性疾患が発症する場合もあります。
一方、前立腺がんは多くは尿道から離れた前立腺の表面部分にてきます。
進行は緩やかなことが多く、進行すると「尿の出具合が悪い」、「血尿がてる」などの排尿に関する症状が現れます。
さらに進行すると、骨に転移することが多く、「腰が痛い」「ちょっとしたことで骨折した(病的骨折)」などの症状で見つかる場合もあります。
しかし初期には自覚症状もほとんどないため、早期発見には検診が必要となります。
PSA(前立腺特異抗原)とは?
がんの進行とともに増加する生体内の物質のことを腫瘍マーカーと言います。
PSA(Prostatic Specific Antigen; 前立腺特異抗原)は前立腺から出されるたんぱ
く質の一種で前立腺がんの腫瘍マーカーです。
正常人の血液中にも存在しますが、前立腺がんが発生すると値が上昇します。
しかし良性疾患である前立腺肥大症や、前立腺の炎症などでも上昇するため、PSA値が基準値を上回った場合は精密検査が必要になります。
ただし、PSA値が高ければ必すがんであるというわけではありませんし、逆にPSA値が正常の場合でも前立腺がんが発生していないということにもなりません。
あくまでも、前立腺がんを発見するきっかけとなる一つの指標です。
PSA値 判定の目安
4ng/ml以下 正常
定期的にPSA検査をして経過を見守ります。
4ng/ml ~ 10ng/mL以下 グレーゾーン
がん以外に前立腺肥大症など、前立腺の他の病気が含まれている可能性がありま
す。
10ng/mlを超える
高くなるほどがんの可能性が大きくなります。
PSA値が高かったら?
PSA値が4ng/mlを超える場合には、専門医による精密検査をお勧めします。
精密検査では、PSAの再検や検尿、超音波検査(エコー)、直腸診などを行います。
PSA値は前立腺肥大症や前立腺の炎症などでも上昇するため、ますこれらの疾患の有無
について検査します。
これらの疾患でないと確認された場合は、前立腺針生検を行います。
これは細い針で前立腺組織を数力所採取し、顕微鏡でがん細胞の有無を調べます
(病理組織検査)。
痛みはほとんどなく、通常1、2泊の入院検査で行われます。
前立腺針生検とは
直腸から超音波を当てながら前立腺の正確な位置を把握し、細い針で組織を採取しま
す。
前立腺がんと診断されたら、どんな治療がありますか?
がんと診断されたら、CTやMRIなどの画像診断で、がんの浸潤(周囲組織への広がり)や転移(がんが他臓器へ広がっている状態)の有無を調べます。
また、病理組織検査から得られたがんの悪性度やPSA値、さらには患者さんの年齢や全身状態も参考にして治療方法を選択します。
がんが前立腺の内部にとどまっていて、他の臓器に転移していない場合には、手術療法、放射線療法、ホルモン療法(男性ホルモンを遮断する治療)といった様々な選択肢があります.
きわめて初期の場合には治療をせず経過を観察することも可能です。
前立腺周囲への浸潤がある場合には、放射線療法、ホルモン療法のどちらかまたは両方を行うことが一般的です。
骨など他臓器への転移がある場合には、ホルモン療法を第一に選択することになります。
前立腺がんは一般的に進行がゆっくりで、たとえ転移が認められてもホルモン剤を中心とした薬物治療が有効です。
専門医による診断をきちんと受け、適切な治療を行ってもらいましょう。
前立腺がんの治療法
早期には局所療法、進行するとホルモン療法が主体
限局がん
・手術療法
・放射線治療
・ホルモン療法
・無治療経過観察
局所浸潤がん
・ホルモン療法
・放射線治療
転移がん・周囲浸潤がん
・ホルモン療法
アスピリンと前立腺がん 前立腺がん診断後の進行も抑制
https://www.m3.com/clinical/news/392123
・米国臨床腫瘍学会(ASCO)は2016年1月4日、日常的なアスピリンの服用で前立腺癌による死亡リスクが減少できる可能性があるとする大規模な長期観察研究の結果を紹介した。
泌尿生殖器癌シンポジウム(ASCO-GU)2016(サンフランシスコ)で発表された。
・研究では、Physicians’ Health Studyに登録された2万2071人のデータを解析。
27年間の追跡調査で前立腺癌と診断されたのは3193人で、うち403人が致死的な前立腺癌(転移あるいは前立腺癌死)だった。
・年齢、人種、BMI、喫煙状況で調整した結果、前立腺癌と診断を受けていない男性で週3回以上日常的にアスピリンを服用している群では、致死的な前立腺癌のリスクは24%低下した。
また、前立腺癌と診断後に日常的にアスピリンの服用を開始した群でも、前立腺癌による死亡は39%低下した。
しかし、アスピリンの日常的服用と前立腺癌全体の発症率には関連性は認められなかった。
・研究者は、「致死的前立腺癌の予防にアスピリンを推奨するのは時期尚早だが、心血管系への効果を得る可能性のある前立腺癌患者には日常的なアスピリン服用を検討するもうひとつの理由になる」と説明。
さらに「アスピリンは前立腺癌の進行を抑制しているかもしれない」と述べている。
日常的なアスピリン投与で前立腺癌による死亡のリスクが減少できる可能性【ASCO GU2016】
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/search/cancer/news/201601/545330.html
アスピリンの常用、前立腺癌治療の助けに
http://www.qlifepro.com/news/20120903/help-in-the-treatment-of-prostate-cancer-aspirin-and.html