心房細動はなぜ起こるの?
心房細動は、心臓に病気がある人だけでなく、ストレスや不規則な生活習慣でも起きてきます。
自律神経活動の亢進が誘因となりやすい不整脈として知られており、日中に起きやすい、夜間に起きやすい、食後や飲酒後に起きやすい、運動時に起きやすいなどはその典型的な場合と言えるでしょう。
自律神経とは、意識しないでも内臓や血管の働きをコントロールして、体の環境を整える神経です。
交感神経と副交感神経があります。
心房細動になると・・・
心房細動の主な症状は動悸(脈のバラバラ感)です。
致死的な不整脈ではありませんが、下記の危険因子がある人や持続する場合は血栓塞栓症(特に脳梗塞)をきたしやすくなります。
多くの場合、抗凝固薬で予防する必要があります。
参考
心房細動が持続すると、心房内に血の固まり(血栓)ができやすくなります。
その血栓が血管を通って脳の細い血管に詰まると、脳塞栓が起こる危険があります。
脳塞栓は脳梗塞のうち脳以外から血などの塊が飛んで脳内の血管に詰まる病気のことです。
一般的に、脳内に詰まる原因がある脳血栓より大きな梗塞になるといわれている怖い病気です。
心房細動だ血栓塞栓症を来しやすいのはこんな人
①高齢者
②他の心臓病がある
③高血圧
④糖尿病
⑤脳梗塞を起こしたことがある
薬物療法とカテーテルアブレーション療法があります。
薬物療法では自律神経が関与して発現するときは、その抑制作用を併せ持つ薬物を用いると、治療効果をあげることが出来ます。
治療の目的
① 自覚症状の改善
② 生活の質(quality of life:QOL)の向上
③ 血栓塞栓症の予防
自律持経活動からみた心房細勣の分類
① 交感神経緊張型(発症は日中に多い)
② 副交感神経緊張型(発症は夜間に多い)
③ 混合型(発症に明らかな特徴がないもの)
出典
監修 杏林大学医学部第二内科 池田隆徳准教授
日本心臓財団
(一部改変)
薬物療法について
心房細動リズムのコントロールに用いられる一般的な薬剤
・ピルシカイニド塩酸塩
・アミオダロン
・ソタロール
・ジソピラミド
・ ベプリコール
・プロパフェノン
・プロカインアミ
・フレカイニド
心拍数をコントロールするためにはジギタリス製剤、βブロッカーやカルシウム拮抗薬を処方する。このような薬剤によって心房細動の症状の一部は軽減できても、心房細動の出現そのものは予防できないことが多い。(脳卒中や心不全のリスクはなくならない)
また、脳卒中リスクを減らすために、血栓形成を予防する抗凝固薬を処方することがある。
心房細動と診断されたときには、まずアブレーションで根治を目指すのか、薬物治療で対症療法を行うのかを検討擦る。最近の傾向は、アブレーションで根治を目指すことが多くなっている。
症状の強い方、若年者、心不全を合併した方、根治して薬をやめたい方などはアブレーションを選択することが多い。
一方で、心房細動の罹患期間が長くアブレーションが困難な場合や高齢などのために体力が落ちている場合には、薬剤治療を一生涯にわたって行うことが多い。
また最近普及しつつある方法として、脳梗塞リスクが高いにもかかわらず抗凝固薬を服用できない患者さんにはカテーテル左心耳閉鎖術で心房内血栓ができる左心耳という場所を閉じてしまう方法もある。
薬剤治療では、心房細動による脳梗塞を予防するための抗凝固療法が重要となる。
大多数の心房細動ではカテーテルアブレーションで根治しない限り、抗凝固薬を一生涯継続する必要がある。
また心房細動発作を抑制したり心拍数を調節したりすることにより心房細動による不快な症状を和らげるための抗不整脈薬治療がある。
それでも心房細動が続く場合には、続発する心不全を予防・治療するための薬剤を服用することがある。
心房細動停止薬
心房細動を止める、あるいは次の心房細動発作を起こりにくくする作用のある薬。
いずれも服用後しばらく効果を発揮するが、服用をやめれば元に戻ってしまうため、心房細動を根治させることは難しい。
心房細動の症状を抑えたり、心不全を発症しないようにするためのお薬で、主として発作性心房細動の場合に使います。
サンリズム、タンボコール、ベプリコール
効果
服用後4~8時間程度、心房細動発作を起きにくくする、あるいは心房細動発作を止める (有効率 30~50% 程度)。
注意すべき副作用
心室性不整脈の誘発(1%以下)、徐脈など、内服開始後ふらつきや失神が見られたら、すぐに服用を中止して、処方医に連絡する。
高齢者や心機能、腎機能が低下している患者さんで副作用が出やすくなっている。
アンカロン
効果
服用後、心房細動発作を起こりにくくする作用と心房細動であっても心拍数を下げる効果の両方がある。心機能が低下した患者さんでも使用できます。
注意すべき副作用
徐脈、眼の角膜色素沈着、甲状腺機能異常、間質性肺炎 (1%以下) など。
アンカロン特有の副作用があり、特に間質性肺炎は命に係わる副作用です。
服用中に咳が続くようであれば、はやめに処方医に相談してください。
長期間使う場合はできるだけ少量で継続することが副作用を予防するうえで重要です。
心拍数調整薬
心房細動による動悸や息切れの症状は、心拍数が早すぎることが原因となっていることがあります。そのような場合には心房細動の心拍数を抑える薬剤を使用します。主に持続性心房細動で使用します。発作性心房細動では、発作そのものを抑制する薬剤のほうが有効です。効果が強すぎて脈が遅くなりすぎる徐脈や血圧が低下しすぎた場合には、立ち眩みやふらつきなどの副作用がみられることがあります。
メインテート、アートストなど
交感神経の動きを抑えて心拍数を抑制します。心拍数調整薬としては広く使われるものです。メインテートは1日1回で効果が持続しますので、使いやすい薬剤となります。心機能が低下している患者では、少量から慎重に扱う必要があります。
ワソランなど
心臓内の電気の伝わり方を悪くして心房細動による頻拍を改善します。効果が強いですが、4~6時間程度しか持続しないので1日3回程度服用する必要があります。また心機能が低下した患者では使えません。
ジゴキシンなど
心機能を低下させずに心拍数を低下させる効果がありますが、あまり大きな効果は期待できません。また長期間使用する場合は、中毒症状を起こさないよう血液検査を定期的に行う必要があります。