心臓腫瘍

(ドクター用)心臓腫瘍

https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000240.html

他の臓器と同様に、心臓にも腫瘍が発生する。頻度的には、全剖検例の0.1%以下とまれな疾患で、そのうちの約70%が良性腫瘍、30%が悪性腫瘍。

良性腫瘍の中では、最も多いものが粘液腫で良性腫瘍の約半分、全心臓腫瘍の3割強を占める。

そのため心臓腫瘍というと、まず粘液腫を考える。

これは粘液状の基質が豊富に存在する腫瘍で、見た目は赤茶色のゼリー状の腫瘍。

女性が男性より2~3倍多く、左心房に発生するものが4分の3を占める。

家族性に発症するものが約5%あり、その場合は若年男性、多発性、再発が多いのが特徴。

 

粘液腫以外の良性腫瘍には、脂肪腫、乳頭状弾性線維腫、横紋筋腫、線維腫、血管腫、房室結節中皮腫、奇形腫などがある。

形態的にもそれぞれ特徴があり、例えば乳頭状弾性繊維腫は、絨毛構造を持つため、体内ではイソギンチャクに似た形態をしている。

良性腫瘍なので腫瘍自体が生命に危険を及ぼすことはないが、腫瘍の発生部位によって心機能に影響したり、腫瘍の一部が壊れてそれが塞栓症の原因となったりする場合があり、原則として腫瘍は切除するのが原則となる。

 

悪性腫瘍には、原発性のものと転移性のものがあるが、原発性の悪性腫瘍は、悪性中皮腫、肉腫、悪性リンパ腫が多くを占める。

いずれも予後不良で、悪性中皮腫は若年成人に発症することが多く、1年以内に死に至る。肉腫、悪性リンパ腫は、右心房がよく発生する部位で、中年以降に発症し、肺、縦隔に高率に転移する。

切除、放射線療法、抗がん剤による化学療法のいずれもあまり効果はなく、予後が改善したという治療法の報告はほとんどない。