マイコプラズマ肺炎

概要

マイコプラズマは典型例では肺に障害をもたらし(マイコプラズマ肺炎)、咳や息苦しさなどの呼吸器症状をもたらす。

しかし、それ以外にも皮疹、手足の動かしにくさ、腎機能の低下、関節の痛みなど、多種多様な症状をもたらす危険性もある。

マイコプラズマは、感染者の唾液などを介して感染する。

症状の出方は患者さんによって大きく異なり、外来での治療でも充分対応できることがある一方、入院による集中的な治療が要求されることもある。

治療に際しては、抗生物質の使用が中心となるが、薬に対しての効果が悪い場合もあるため、しっかりとした治療効果を確認しつつ、治療を継続することが重要となる。

 

症状

マイコプラズマに感染すると、肺に病変が生じる場合が多い。

感染からおよそ2~3週間ほどの潜伏期間を経たのち、頭痛や疲れやすさ、喉の痛み、咳などの症状が引き起こされる。

肺に炎症をきたすが、痰は目立たないことが特徴の一つとしてあげられる。

症状が出現してから数週間ほど経過したのち、治癒に向かう。

 

肺以外の臓器にも症状が見られることもある。

発疹や赤み、蕁麻疹、出血斑などの症状が皮膚に見られることがある

また、眼の充血や目やに、耳の聞こえの障害、関節の痛みなどの症状が引き起されることもある。

 

そのほか、マイコプラズマ感染症では脳炎や髄膜炎、ギランバレー症候群などの神経系の合併症をみることがある。

これらの合併症によって、頭痛や吐き気、手足の動かしにくさなどの症状につながることもある。

 

そのほかにも、心筋炎や膵炎、肝機能障害、腎機能障害、貧血など、マイコプラズマ感染症ではさまざまな病態が惹起されることがある。

さらには、動悸や息切れ、お腹の痛み、疲れやすさなど、さまざまな症状が見られることもある。

 

治療

マイコプラズマ感染症は、無治療であっても自然に症状が改善することが期待できる場合もある。

そのため、積極的な治療を行うことなく、対症療法的な対応を継続することで、治癒に向かうことも多い。

 

その一方、病状に応じてより積極的な治療介入が必要とされることもある。

マイコプラズマは、マクロライド系やテトラサイクリン系などといった抗生物質での効果が期待できるため、こうした抗生物質が使用されることが多い。

そのほか、対症療法的に、輸液や酸素投与、解熱剤の投与などが検討されることもある。

 

また、マイコプラズマ感染症では、免疫学的な異常を基盤として、さまざまな症状が惹起されることもある。

こうした免疫系の異常を是正させることを目的として、ステロイドなどの薬剤が使用されることもある。

 

マイコプラズマ感染症の経過は、患者さんによって大きく異なる。

病状や重症度を正確に把握したうえで、最適な治療方針を決定することが重要となる。

 

 

マイコプラズマ肺炎についての豆知識

マイコプラズマ肺炎は、「肺炎マイコプラズマ」という少し変わった細菌によって引き起こされる感染症で、子どもが罹る病気というイメージがあるが、大人も罹患する。

 

症状に関しても大人と子どもに差はなく、空咳、発熱、喉の痛み、さらに嘔吐、下痢などの消化器症状が挙げられる。また特徴的なのは、全体の約25%に胸痛が現れる。肺炎という名前がついているが、痰が少なく、風邪のような症状や、肺以外のお腹などの症状を伴うことがある。

 

一般的には軽症で経過することが多いが、乳幼児、高齢者、基礎疾患のある方などは重症化のリスクが高まる。また、適切な治療が遅れた場合や、他の感染症を合併した場合にも重症化することがあり、肺炎が進行することによる呼吸困難、39度以上の高熱が続く、脳炎、心筋炎、溶血性貧血、ギラン・バレー症候群などの合併症を引き起こすこともある。

 

マイコプラズマ肺炎の症状のなかでも、痰を伴わない咳、通常「空咳」と呼ばれるものが最も多く、重症感がなく、咳が続くため「ただの風邪」と自己判断してしまうケースも多い。また感染経路は、咳やくしゃみなどの飛沫感染が主で、発症前から菌の排出があるため感染に気づかずに多くの人にうつしてしまう可能性もある。

 

診断のポイントは、特徴的な痰を伴わない乾いた咳と、消化器症状などの呼吸器以外の症状。咳以外の症状としては、発熱は微熱や高熱、咽頭痛、下痢といった消化器症状、胸痛などがある。感染経路としては、飛沫感染・接触感染するため、感染力が高く、家庭内で子どもがかかった後に大人がかかるというケースも多くみられるため、周囲に感染している人がいるかどうかもポイントになる。

 

マイコプラズマ肺炎は、日本を含め各国で周期的に流行を繰り返しており、日本において顕著な流行が見られたのは過去10年では「2015年」と「2016年」。これらの年は、患者数が例年よりも大幅に増加し、社会的な問題となった。コロナ禍以降は流行がなかったが、2024年春ごろから増加し始めた。数年ごとに流行しており、よくオリンピックイヤーに流行を認めていたことから、「オリンピック病」とも呼ばれる。

 

ただし、オリンピック開催年だからといって必ずマイコプラズマ肺炎が流行するわけではない。あくまで過去の流行傾向から、オリンピック病と呼ばれるようになっただけだが、夏から秋にかけて流行する病気であり、これからの季節も油断は禁物だという。

 

マイコプラズマ肺炎は自然に治癒することが多い疾患ではあるが、検査と抗生物質による治療も可能。検査に関しては、即時で判明する抗原検査、抗体を調べる血液検査、LAMP法というPCR検査のように核酸を検査する方法などがある。

 

大人に関しては、比較的症状が軽症なことが多く、自然に治癒する病気でもある。マイコプラズマ肺炎と思われる症状が重たい場合や、家族や職場などで感染者がいる場合、他に合併症がある場合には、レントゲン検査やマイコプラズマ検査が検討される。

(コメント;マイコプラズマ肺炎という病名がついているが必ずしもレントゲンで陰影が写るわけではない。むしろレントゲンで異常がないほうが多いともいえる。そういった場合には「マイコプラズマ気管支炎」「マイコプラズマ感染症」といった病名のほうが相応しい)

 

マイコプラズマ肺炎は、通常の細菌とは異なり細胞壁を持たないため、ペニシリン系やセフェム系の抗生物質は効果がなく、マクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系の抗生物質が有効とされている。近年、これらの抗生物質が効きにくい耐性菌の出現も報告されている。

 

 

https://x.com/watanabenaika/status/1862387616680710250

https://x.com/watanabenaika/status/1862388290827206917

https://x.com/watanabenaika/status/1862388988570697906

https://x.com/watanabenaika/status/1862389726172651980

 

 

学校などの登校については、マイコプラズマ肺炎になっても出席停止期間の定めはない。

症状が改善するには治療開始から1週間程度必要なので、体調が回復するまでは休んだほうがいい。