パーキンソン病とは
じっとしているときにふるえる、歩く速さや普段の動作が遅くなる、姿勢が前かがみになる、これらの症状の原因が、検査してもみつからないときは、パーキンソン病かもしれません。
パーキンソン病は、体の片側から症状があらわれ、左右で差があり、緩やかに進行するという特徴があります。
体を動かす機能を調節する脳内のドパミンという物質の不足が原因ですが、なぜドパミンを作る細胞が減ってしまうのかはまだわかっていません。
パーキンソン症候群
パーキンソン病と症状が似ていても、原因が別にある病気をまとめて「パーキンソン症候群」といいます。
服用している薬による「薬剤性」や、脳血管障害による「脳血管性」、外傷による「外傷性」など、さまざまです。
これらは原因をみつけて、その治療を受けることが大切です。
「字を書く」など何か動作をするときにふるえてしまうのは「本態性振戦」という病気です。
これはパーキンソン病ではなく、治療も異なります。
薬が原因のことも
パーキンソン症候群の中で多いのは薬剤性と脳血管性です。
薬剤性は、症状が急に進行し、左右の差があまりありません。
うつ病の治療薬、降圧薬、食欲増進薬などの一部の薬を、それと気づかずに服用していて症状があらわれることがあります。
いずれの場合も、適切な治療を受ければ長く活動的な生活を送ることができます。
気になる症状があったら、早めにかかりつけの医師に相談しましょう。
(NHK「きょうの健康」1992.7)
日常生活の動作が変化
パーキンソン病の主な症状は、手足のふるえ、体の硬さ、普段の動作
が遅くなる、姿勢が前かがみになる・歩く速さが遅くなるなど、老化現象に似ています。
これらの症状は、脳の中にある体を動かす機能を調節する物質が不足
するなど、脳の働きの低下によるものです。
かかりつけ医、専門医の活用を
パーキンソン病の治療は、薬物療法が基本です。
脳で欠乏する物質を補う薬など種類があるので、患者さん一人ひとりに合った薬を飲みます。
そのため、専門医による正確な診断が必要です。
気になる症状があれば、かかりつけ医から専門の神経内科医を紹介してもらい、受診しましょう。
治療に入ったら専門医から半年に1度は治療方針のアドバイスを受けながら、日頃の経過はかかりつけ医と相談しましょう。
長く上手につきあうために
パーキンソン病は経過の長い病気なので、治療では生活の質(QOL)の向上も大切な目標です。
QOLを妨げるのは、歩行障害、うつ、そして病気からくる生活制限による老化の促進です。
薬を飲みながら運動訓練、バランス体操、プールでの水中歩行、ダンス、音楽療法などを組み合わせます。
さらに少しでも楽しい時間を増やすために、患者友の会など同じ病気を持つ人との交流や、趣味を一緒に楽しめる仲間を作るようにしましょう。“笑いは百薬の長”です。
気分が楽しくなる読み物やテレビ番組を見ることも療養のプラスになります。
また、生活の場をバリアフリーにする、自分に合った履物を選ぶ、歩
行補助具を使う、起立性低血圧に注意する、などにも気を配りましょう。
ぜひ体を動かし、毎日を規則正しく、有意義に楽しく過ごすことを心
がけてください。
監修:
独立行政法人労働者健康安全機構関東労災病院名誉院長 柳沢信夫
パーキンソン病の四大症状
パーキンソン病には四大症状と呼ばれる特徴的な運動の症状があります。
①ふるえ(振戦)
これは体を動かしていないときに主に手足に見られるものです(静止時振戦)。
何か動作をしている間はこの症状はむしろ軽くなることが特徴です。
丸薬を丸めるような手の指のふるえは典型的なものです。
② 手足が固くなる(筋固縮)
筋肉の緊張が強くなり手足の動きがゆっくりとぎこちなくなります.
③ 動作がゆっくりとなる(無動症)
筋固縮によるものや運動の麻痺によるものではなく、動作の開始がゆっくりとなったり、寝返りができにくくなるなどの症状です。
④ 体のバランスが悪くなる(姿勢反射障害)
後ろへ転びやすくなることがしばしばみられます。
前かがみ姿勢はこの病気に特有の症状ですが、これは後方へ倒れやすいことへの防御姿勢と考えられます。
以上は運動障害の症状ですが、パーキンソン病ではそのほか、精神面での活動も遅くなったり、自律神経機能の障害も生じます。
病気の初発症状として、手足のふるえが最も多く約70%、歩行障害が11%,次いで日常動作の緩慢が10%となっています。(1967年の米国の調査)
1988年の日本の調査では、ふるえは58%,歩行障害24%、日常動作の緩慢21%です。
パーキンソン病の症状
⚫︎ 運動の症状
・手足のふるえ
・動作が遅い、動作の開始に時間がかかる
・すくみ足、歩き出すとだんだん早足になる
・歩行の時に手の振りがない
・前かがみ姿勢、小股歩行
・声が小さい,表情が乏しい
・転びやすい
・食べ物を飲み込みにくい
⚫︎ 自律神経症状
・顔がてかてかと光る(脂肪分泌が増える)
・便秘
・立ちくらみ ( 起立性低血圧 )
・排尿障害 ( 尿をもらすことなど )
・体温の調節障害 ( 手足の冷えなど)
・手足のむくみ ( 浮腫 )
⚫︎ 精神症状
・元気がない・神経質
・意欲・自発性の低下
・幻覚・妄想状態
・痴呆
⚫︎ その他
・手足の変形
・身体が傾く
・脱大感、身体のこわばり
・関節や筋肉の痛み
・よだれをたらす
・字が書きにくい、字が小さくなる(小字症)
・目をあけにくい
(NHK「きょうの健康」1992.7)
パーキンソン病と上手につきあう10ポイント
1. 一生つれそう病気です。つれあいと思い折り合ってつきあいましょう。
2.症状の改善は腹八分をもってよしとしましょう。
3.何事に対しても常に興味を持つように心がけましょう。
4.急がばまわれ、何事も2倍の時間をかけるつもりで行動しましょう。
5.リハビリテーションを生活の一部としてしまいましょう。
6.主治医にはなんでも遠慮せずに相談しましょう。
7.家族の過保護は百害あって一利なしです。「手助けは控え目に」の気持ちで。
8.夏は水分をよ<摂りましょう。風邪ひきは早めに治療しましょう。
9.便秘は体によくありません。線維の多い野菜をとるように心がけましょう。
10. 多<の人々の知恵を借り、手助けを求めましょう。遠慮はいりません。
参考・引用一部改変
患者と家族のためのパーキンソン病 Q & A ライフ・サイエンス
パーキンソン病の重症度
(NHK「きょうの健康」1992.7)
(NHK「きょうの健康」1992.7)