・腹部大動脈瘤(AAA)の内科治療とフォローアップの推奨とエビデンスレベル
(P76 図)
・内科治療
AAAの治療方針はその最大径によって決定する必要がある。
大動脈瘤は、一度発生すると拡大を続ける傾向にあり、破裂症例では病院に救急搬送
されても8割以上が救命不能であるため、無症状の状態で診断・治療を行うことが重要である。
AAAに対する内科治療の目的は、瘤の拡大・破裂の予防と、動脈硬化に関連した心血管イベントリスクの低減である。
これまで、あらゆる薬物療法において大動脈瘤の拡大を抑制したというエビデンスはない。
一方、喫煙はAAAの拡大・破裂の重大な危険因子であり、禁煙指導は内科治療の重要な一部である。
また、AAA患者は心血管イベントのリスクが高く、AAAに対する外科手術後における主要な晩期死亡原因は、心疾患、肺癌、肺疾患の順である。
AAAの外科手術症例の長期予後調査では、死因の約4割が心血管関連であり、22%が心筋梗塞と報告されている。
腎動脈下AAA患者に対する待機的外科手術の術前に冠動脈造影を施行したところ、半数以上が冠動脈疾患を合併していたとの報告があり、負荷心筋SPECT施行にて冠動脈虚血の存在を評価した研究においては、AAA症例の37%に心筋虚血を認め、末梢動脈疾患合併例でより高くなる(77%)との報告がある。
薬物療法(P77)
ARBとアルドステロン拮抗薬に拡大速度を抑制する効果が示唆されている。(Chichester研究)
近年行われた大規模なメタ解析の結果、スタチンはAAA拡大・破裂を抑制し,AAAに対する手術の周術期リスクを下げる因子となる可能性が示唆され動脈硬化を背景とした心血管イベントの発症抑制効果も報告されており、AAA患者への投与は推奨される。