新しい糖尿病のくすり

血糖値が高まる原因は、インスリンの働きの低下にある

血糖値とは、血液中のブドウ糖の濃度のことです。

食事をとると、炭水化物(糖質)が分解されてブドウ糖になり、それが血流によって全身の組織に運ばれて利用されます。

ブドウ糖は、肝臓や筋肉、脂肪組織に取り込まれますが、それを調節しているのが、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンです。

  

健康な人は、インスリンによるブドウ糖の調節が十分にできているため、血糖値はほぼ一定に保たれます。

糖尿病がある人の場合は、血糖値が高い状態が続きますが、その原因として次の2つが考えられています。

 

● インスリンの分泌低下

膵臓からのインスリンの分泌が障害されて、インスリンの分泌量が少なくなります。

ブドウ糖を肝臓や筋肉、脂肪組織にうまく取り込めなくなるため、血糖値が上がります。

日本人には、体質的にインスリンの分泌が低下しやすい人が多いといわれています。

 

● インスリン抵抗性

インスリンの分泌量は保たれていますが、肥満などによりインスリンの効果が現れにくくなり、ブドウ糖を肝臓などにうまく取り込むことができなくなります。

そのため、血糖値が上がります。

 

欧米人に多いタイプですが、最近では日本人でもインスリン抵抗性による糖尿病が増えています

 

糖尿病の治療薬には、経口薬と注射薬がある

糖尿病の治療薬には、経口薬と注射薬があります。

経口薬には、膵臓に作用してインスリンの分泌を促す「インスリン分泌促進薬」や、肝臓や筋肉、脂肪組織に働いてインスリンの働きを改善する「インスリン抵抗性改善薬」、小腸に作用してブドウ糖の吸収を遅くする薬があります。

注射薬には「インスリン製剤」があり、膵臓から分泌されるインスリンの働きをします。

2009年からは「インクレチン関連薬」が登場しました。

 

インクレチン関連薬とは

インクレチン関連薬には、「DPPー4阻害薬」と「GLPー1受容体作動薬」があります。

どちらもインスリンの分泌を促進する働きをもっていますが、血糖値を下げる仕組みは、従来から使われているインスリン分泌促進薬とは異なります。

 

● 血糖値が高いときにインスリン分泌を促進する

インスリン分泌促進薬で、従来からよく使われている「スルホニル尿素薬」は、血糖値に関係なくインスリンの分泌を促します。

一方、インクレチン関連薬は、血糖値が高いときにのみインスリンの分泌を促進します。そのため、低血糖が起こりにくくなるのです。

 

● グルカゴンの分泌を抑制する

膵臓は血糖値を上げる「グルカゴン」というホルモンも分泌しています。

健康な人は、血糖値が高い状態ではグルカゴンの分泌が抑えられていますが、糖尿病がある人では、分泌量が増えてしまいます。

インクレチン関連薬には、膵臓からのグルカゴンの分泌を抑える働きもあります。

 

このようにインクレチン関連薬は、インスリンの分泌を増やす一方で、グルカゴンの分泌を抑えるという2つの作用によって血糖値を低下させます。

   

インクレチン関連薬は、ほかの薬と併用されることが多い

2つのインクレチン関連薬を従来からよく使われているスルホニル尿素薬と比

較すると、次のような違いがあります。

● DPPー4阻害薬の場合

スルホニル尿素薬と同じ経口薬ですが、血糖値を下げる効果は同等かやや弱まります。

だし、スルホニル尿素薬にみられる低血糖や体重の増加は起こりにくくなります。

 

● GLPー1受容体作動薬の場合

注射薬で用いられます。

血糖値を下げる効果はスルホニル尿素薬より強くなります。

低血糖が起こりにくく、食欲を抑え、体重の減量効果も期待できます。

 

これらのインクレチン関連薬は、従来から使われているインスリン分泌促進薬

やほかの治療薬と併用されることが多くあります。

 

治療薬を併用する場合は、糖尿病の原因や患者さんの病状に合わせて、さまざ

まな組み合わせで用いられます。

 

併用する場合は低血糖に注意する

インクレチン関連薬は低血糖の起こりにくい薬ですが、ほかの薬と併用する場

合は、血糖値が下がりすぎることがあります。

スルホニル尿素薬と併用する場合は、スルホニル尿素薬の量を減らして使われます。

 

高齢者や腎臓の働きが低下している人は、特に注意が必要です。