血管性認知症

血管性認知症

 

認知症にはいくつかのタイプがあり、よく知られているアルツハイマー病以外の病気によるものもあります。 

 

血管性認知症とは

脳の血流障害によって起こり2つのタイプがある

血管性認知症は、脳の血流障害によって起こる認知症です。脳の血管が詰まる脳梗塞や、脳の血管が破れる脳出血などで、脳の一部の神経細胞が死滅するために起こります。

 

次の2つのタイプがあります。

● 脳卒中による認知症

認知症の症状が現れる前に、脳梗塞や脳出血などの脳卒中を起こしているタイプです。

初めに半身の麻痺、ろれつが回らない、フラフラする、といった症状が現れるため、多くは医療機関を受診し、脳卒中と診断されます。

 

脳卒中の発症から数か月以内に、認知症の症状が一部の人に現れてきます。

 

 脳小血管病による認知症

脳小血管病は脳の細い血管に起こりますが、多くは症状が出ない無症候性ラクナ梗塞や無症候性徴小脳出血などです..

障害の起きている範囲が小さいため、症状が現れにくく、本人が気付かないうちに病変の数が増えてしまうことがあります。

 

ラクナ梗塞や微小脳出血は、40歳以上であれば、多くの人にI~2か所は見られます。

数が少なければ影響は小さいのですが、多くなると認知症の症状が現れてきます。

高齢になるほど加齢に伴って数が増えやすいため、脳小血管病による認知症にもなりやすくなります。

 

脳血管性認知症の症状

スムーズにできていたことができなくなる

次のような症状が現れてきます。

① スムーズにできていたことが段取りよくできなくなる・・・神経細胞の壊死が脳の白質という部分で起こると、白質は情報を伝える経路に当たるので、情報を最短ルートで伝えられなくなります。

② 物忘れが多くなった・・・ただし、初期では、ヒントを言ってもらえば思い出せます。自分が思い出せずにいることも自覚しています。

③ 動作がゆっくりになる・・・情報経路が遮断されることで、脳からの指令が体にうまく伝わらなくなって起こります。

活気がなくなった、言葉数が少なくなった・・・この情報の遮断が広範囲になると自発性の低下が起こります。

急に怒ったり泣いたり笑い出したりする・・・感情失禁といって感情をコントロールできない不安定な状態になります。

泣いている顔で笑う、といったことも起こります。

 

 

血管性認知症の診断

問診や記憶力のテスト、脳画像検査を受ける

脳血管性認知症を診断するために行われるのは、症状などを聞き取る問診、記憶力などを調べるテスト、CTやMRIなどの脳の画像検査です。

 

⬛︎ 脳卒中の発病の有無で検査は異なる

脳卒中を起こしたことがある人は、その後、CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像)などの脳の画像検査を定期的に受けているはずです。

そこで脳卒中の再発が見つかれば、すぐにその治療が必要になります。

再発がなくても、白質の状態に変化が見られれば、必要に応じて認知症を防ぐための対応をとります。

認知症を疑う症状があれば、問診や記憶カテストなどが行われます。

 

脳卒中を起こしていないけれど、認知症が疑われる症状がある場合は、問診や記憶力テストやはり疑わしい場合に、脳の画像検査が行われます。

 

症状が出にくい脳小血管病については、動脈硬化の危険因子がある人や70歳以上の人には、早期発見のために、脳ドックを受診することをお勤めします。

 

血管性認知症への対処法 

脳卒中の再発予防や症状を改善する治療を行う

血管性認知症の人には、次のような対処法が必要です。

 

 脳卒中の再発予防

認知症の発症、進行を防ぐためにも欠かせません。

基本は食事や運動など、生活習慣の改善です。

必要に応じて薬を使用します。

 

 脳小血管病の増加予防  

認知症の発症や進行を防ぐには、脳小血管病を増やさないようにします。

危険因子となる病気のコントロールや禁煙が必要です。

 

 血管性認知症の症状を改善  

意欲低下、うつ、不安感、注意力低下などの症状が現れている場合には、それを改善させる治療を行います。

脳の血管を拡張させる脳循環改善薬や、神経細胞の代謝を促す脳代謝改善薬が使われます。

 

最近では、アルツハイマー病と血管性認知症の混合型が多いことがわかってきています。

脳梗塞に対して迅速に対処して再発を防いでも、海馬の萎縮が同時に起きて認知症を発症するのです。

 

特に80歳以上の高齢者では、高い確率で脳小血管病も海馬の萎縮も起こっています。

最近の研究では、アルツハイマー病も生活習慣病によって起こりやすいことが明らかになっています。

混合型の認知症を予防するためにも、生活習慣の改善に取り組みましょう。

             

 

参考 きようの健康 2016.4  阿部康二・岡山大学大学院教授